破ったら切腹!で有名な新選組の局中法度。
しかし実は、創作だったと言われています。
本当の新選組に隊規はあったのか、検証してみます。
新選組の局中法度とは?
新選組の厳しい隊規として有名な、局中法度。
局中法度(きょくちゅうはっとがき)とも言われます。
以下の五箇条からなり、新選組での「法」として厳格に運用され、内部粛清に使われたとされます。
一、局ヲ脱スルヲ不許
一、勝手ニ金策致不可
一、勝手ニ訴訟取扱不可
一、私ノ闘争ヲ不許
つまり、この五箇条を破ったら切腹だったのです。
局中法度の内容についてはこちらで解説しています。
新選組の局中法度について、かんたんに解説します。 目次1 新選組の局中法度とは?1.1 局中法度の性格1.2 …
この局中法度、実は創作と言われていますが、どのへんが創作なのか?
ホンモノの新選組の規律ってなんだったのか?
見てみたいと思います。
局中法度は後世の創作?
現在伝わっている形の局中法度は、新聞記者の子母沢寛の著作『新選組始末記』上での創作です。
それは、局中法度について記録された当時の史料が存在しないからです。
誰が作ったか?
どういう条文だったか?
本当に五箇条だったのか?
などの疑問は、数少ない手がかりから史的に検証するしかありません。
局中法度の元ネタは、二番隊隊長永倉新八の資料
局中法度は、まったくゼロから創作されたわけではありません。
局中法度の元ネタにされた、二番隊隊長永倉新八の資料があります。
『新選組顛末記』
1つ目は、新選組二番隊長だった永倉新八が、70歳を超えてから語ったものをまとめた『新選組顛末記』です。
これには、こう記載があります。
芹沢は近藤、新見の二人とともに禁令を定めた。
それは第一、士道を背く事。第二、局を脱する事。第三、勝手に金策を致す事。第四、勝手に訴訟を取り扱う事。
この四箇条を背く時は切腹を申し付くる事。
また、この宣告は同士の面前で申し渡すというのであった。
- 定めたのは芹沢、近藤、新見
- 名称は禁令
- 条文は四箇条
- 違反者への切腹は同士の前で申し渡される
ということが分かります。
子母澤寛の『新選組始末記』は、この永倉新八の『新選組顛末記』の後に発行されており、条文も酷似していることから、永倉の資料を基にして「局中法度」という名称とし、五箇条目を足して、創作したことがうかがい知れます。
『浪士文久報告記事』
2つ目は、永倉新八が明治初年に書いた『浪士文久報告記事』です。
こちらには、そもそも四箇条の禁令の話すら出てきません。
定めた人についても不明です。
永倉自身が晩年に語って第三者が手を加えた『新選組顛末記』。
永倉自身が記憶も新しい明治初年に自分で記した『浪士文久報告記事』。
信憑性の上でも、局中法度は本当に存在したのかハッキリ分からないものなのです。
新選組の掟の存在を示す、唯一の同時代史料
『元治秘録』
後年語られた永倉の資料と異なり、こちらは唯一の同時代史料です。
「壬生浪士掟は出奔せしものは見つけ次第同士にて打ち果たし申すべしとの定めの趣」という記述があり、脱退する者を同士が斬っていたことがうかがえます。
ただ、その「定め」の名称や、条文がどんなものであったかは分かりません。
元新選組隊士の回想
元治元(1864)年10月、新選組の江戸での隊士募集に応じて入隊した元新選組隊士・近藤芳助が明治39年に記した書簡が『新撰組往事実戦譚書』に残っています。
これには、「組中の様子を見て解約せんとするも許さず、結局死さざれば脱するを得ず」という記述があります。
つまり、隊士募集に応じて上京してみたが、新選組内部の様子を見て思っていたのと違ったので脱退しようと思ったが許されず、死なないと脱退できないので脱退しなかったということです。
元治元年10月の時点で、「脱退=死」という認識が隊士の間であったということですね。
新選組に脱退=死の認識はあったが、規律の存在は不明
こうして見てくると、史実の新選組では、「新選組を脱退する=死」という認識はあったことが分かります。
ただ、それらが、
- 死に値する行為について、条文で定められていたか
- その条文・規律の名称は何か
- 規律が紙で張り出されていたか
- 違反者は切腹だったのか、斬首・暗殺などの仲間討ちだったのか
- 脱退=死ということは、入隊前に事前に通告されていたか
などはすべて不明なのです。
創作であれ、局中法度はかっこいい?
こちらがよく新選組解説本や漫画、ドラマなんかに引用される局中法度です。
これらを鬼の副長・土方歳三が隊士の前で読み上げるシーンはもはや定番ともいえますね。
一、局ヲ脱スルヲ不許
一、勝手ニ金策致不可
一、勝手ニ訴訟取扱不可
一、私ノ闘争ヲ不許
確かに、きちっとまとまっているとかっこいい気がします。
創作だと言われても、様になるので、使いたくなる気持ち、わかります笑
おわりに
以上、局中法度は創作であることについて見てきました。
「局中法度」という名称で、五箇条あると様になるし、映画やドラマ、小説などで取り上げられ続けて、今でもドラマや小説の新選組では定番になってしまったといえます。
むしろこのポイントが無いと不満かもしれません笑
鬼の副長とセットで新選組のイメージ形成に一役買っている局中法度。
今後も、なかなかそのイメージが世間から無くなることはないでしょう。